デザイン探求記

MIHO MUSEUM

道の駅巡りのついでに寄ったMIHO MUSEUM。
友人から「いいよ」と聞いてはいたけれど、「ついで」のつもりがすっかりメインになってしまった。

ということで、デザイン探求記に残します。


📍 MIHO MUSEUM 基本情報

🟢 所在地:滋賀県甲賀市信楽町田代桃谷300

🟢 設計:I.M.ペイ(イオ・ミン・ペイ)/ ルーヴル美術館ガラスピラミッドの建築家

🟢 公式サイト:https://www.miho.jp

⚠️ 入館料:一般1,300円、高校・大学生1,000円、小中学生無料

🟢 チケット:当日券は発券機で購入可能。現金対応あり(要確認:クレカ対応状況)

🟢 コンセプト:中国の詩人・陶淵明「桃花源記」の桃源郷

📖「桃花源記」と桃源郷とは?

陶淵明(とうえんめい):中国・東晋時代の詩人(365〜427年頃)。乱世を避けて自然の中に隠棲した人物として知られ、「隠者の詩人」と呼ばれる。

「桃花源記(とうかげんのき)」のあらすじ

ある漁師が川をさかのぼっていると、両岸に桃の花が満開の林が現れた。さらに奥へ進むと洞窟があり、その先には外の世界と隔絶した平和な別天地が広がっていた。戦も貧困もなく、人々は穏やかに暮らしていた。漁師は一度外に戻り、その場所を伝えようとしたが、二度とたどり着けなかった——。

「桃源郷」という言葉はこの物語が語源。「現実には存在しない理想の場所」という意味で使われるようになった。

MIHOとの関係:建築家I.M.ペイが子どもの頃にこの物語を読み、強く印象に残っていた。MIHO MUSEUMの設計依頼を受けたとき、「桃花源記」の世界を現代の建築として表現することを思いついたという。

  • 桃の林 → シダレザクラ並木
  • 洞窟 → トンネル
  • 洞窟の先の理想郷 → 展示室棟(美術館)

という対応関係になっている。「日常からトンネルをくぐって別世界へ」というアプローチ体験は、まさにこの物語の再現。

参考:陶淵明「桃花源記」のあらすじ解説 / MIHO MUSEUMと桃源郷のコンセプト(Discover Japan)


🚗 アクセス・到着

車で行きました。 駐車場から入館まで徒歩約10分。思っていたより歩きます。


駐車場〜レセプション棟へのアプローチ

グレーの壁沿いを歩くと、正面にMIHO MUSEUMのブルーのバナーが見えてくる。開放的な空と緑が迎えてくれる。


🏢 レセプション棟

🟢 チケット購入・インフォメーションがあるレセプション棟は、半円形の曲線屋根が特徴的な建物。日本的な大屋根の曲線とガラスと金属フレームが融合したデザイン。

中にはカフェもあります。


🌸 シダレザクラ並木(レセプション棟〜トンネルまで)

🟡 レセプション棟を抜けると、シダレザクラの並木道が続く。春の訪問タイミングによってはまさに満開。

これだけでもう絵になる光景。桃源郷への道を歩いているような感覚。


🕳 トンネル(行き)

🟢 建築設計のハイライトのひとつ。山を貫くトンネルで「日常」から「桃源郷」へと切り替わる空間演出。

🟡 トンネル内はとても涼しい。特に春〜夏の訪問では快適。

入口の半円形のアーチからシダレザクラが垂れ下がっていて、それがとても美しい

トンネルに入って後ろを振り返ると、入口の丸いアーチに桜の花が映えて最高に綺麗。春のベストショットポイント。

トンネル内は近未来的で異空間。日常から切り離されるような感覚。

🟢(建築情報)全長約216m。このトンネルは普通のトンネルと違って、コンクリート打ちっぱなしではありません。わざわざ、銀色の板を内側に貼り付けています。多くの建築評論家が「時空を越えるトンネル」と評しましたが、この銀色の壁は山の緑を、ある時は桜の薄桃色を映し、季節の中で微妙に表情を変えていきます。
建築情報を詳しく説明してくださっている資料を見つけたのでこちらも参考にしました。


🌉 つり橋

🟢 トンネルを抜けると、谷を渡る斜張橋(ケーブル橋)が続く。大きなアーチから放射状にワイヤーが張られた構造。

橋を渡りながら見る山の景色も美しい。展示室棟が遠くに見えてくる。


🏛 美術館棟・外観

🟢 レセプション棟から徒歩でトンネル・橋を渡って到着する展示室棟。建物の約80%が地下に埋まっており、山の稜線を損なわない設計。


🎫 館内の建築・デザイン観察

【画像⑧】館内入口・

館内の主要空間(廊下・エントランス・展示室)は壁面・床ともトラバーチン(石灰岩)で統一されている。

I.M.ペイはルーヴルのピラミッドでも同素材を使用した建築家。

温かみのあるクリーム色が館全体に一貫性をもたらしている。

🟢 三角形のモチーフはI.M.ペイの建築に繰り返し登場するモチーフ(ルーヴルのガラスピラミッドとも共通)。

🟢 ガラス屋根は傘型・複合多角形の構造で、時間帯によって光の模様が変わる。「光こそが鍵」という設計コンセプトの体現。

(窓の外に山・建物の屋根が見える)建物の大部分が地下に埋まっているため、外から見ると小さく見えるが、中はとても広い。


🗿 常設展示(一例)

MIHO MUSEUMは南館(コレクション展示)と北館(特別展示)の2棟構成。ほとんどが写真撮影禁止なので、載せられる分だけ紹介します。

  • 北館:春夏秋の期間限定特別展(今回の「古代黄金の物語」はここ)
  • 南館:世界各地の古代美術・日本美術のコレクションを常時展示(入れ替えあり)

【画像10】フロアモザイク(ローマ時代)

🟢 MIHO MUSEUMは古代ローマ・ギリシャ・エジプト・西アジアなど世界各地の古代美術品も常設展示している。このモザイクはローマ時代のもの。

11螺鈿(らでん)漆器

中は撮影禁止。

曜変天目と螺鈿漆器の展示がありました。

MIHO MUSEUMが所蔵する曜変天目は:

  • 正式名称:曜変天目
  • 中国・宋時代 12〜13世紀
  • 指定区分:重要文化財(国宝ではなく、重要文化財)
  • 前田家(加賀藩)伝来品
  • MIHO MUSEUM自館蔵

⚠️ よく誤解されますが、国宝の曜変天目は静嘉堂文庫(東京)・藤田美術館(大阪)・大徳寺龍光院(京都)の3碗。MIHO MUSEUMのは「重要文化財」。ただし世界に数碗しか存在しない超希少品であることに変わりなし。

獅子頭形杯(リュトン)は、底の穴から液体が出る構造なのでテーブルに置いたら流れ出てしまう設計。「飲み干すまで置けない」が意図的で、古代の宴や神への献酒の儀式に使われました。現代のコップとは発想が真逆で、デザイン的にも面白い着眼点です!

アケメネス朝ペルシアでは宗教儀礼(灌奠)の道具として使用。神に酒や水を捧げる際に注ぎながら使うもの。


🥇 12春季特別展「古代黄金の物語」

中は撮影禁止。

「ごあいさつ」パネル

🟢 展示室入口のごあいさつパネル(現地撮影)より抜粋:

「古来人々は、黄金の輝きに魅了されて来ました。金は銀や銅とならんで、歴史上最初に発見された金属のひとつです。 人類が金を使用した最も古い例は、約6000年前の黒海西岸ブルガリア・ヴァルナの古墳に遡ります。それらは驚くべき質と量を備えており、最初の金の使用は、さらに古い時代と考えられます。 エジプトでは太陽神ラーの身体は金と銀でできており、黄金は神の肉とされました。拝火教では最初の人間が死んだ時に、その体から7つの金属が生まれ、金は輝く光の象徴であり魂であるとされました。黄金は単なる物質ではなく、神々や魂に関わる存在だったのです。」

🟢 出品協力機関(ごあいさつパネルより確認):

  • 国立科学博物館(東京・上野)
  • 古代オリエント博物館
  • 岡山市立オリエント美術館
  • 日本精鉱株式会社
  • 個人所蔵者
  • アルビオンアートジュエリーインスティチュート(協力)

チラシ

展示のポイント:自然金(天然金鉱石)コーナー

🟢 第I章「黄金とエレクトラム」(No.1〜15)は天然の金鉱石標本(自然金)。日本各地の金山から採掘された本物の金鉱石を、国立科学博物館から借用して展示。

🟢 主な産地:

  • 佐渡金山(新潟)
  • 秩父鉱山(埼玉)
  • 天沼鉱山(群馬)
  • 中瀬鉱山(兵庫)
  • 多摩川(東京)
  • 山ヶ野鉱山(鹿児島)
  • Eagle's Nest Mine(カリフォルニア・アメリカ)

🟡 「自然金なんて普段見る機会がないから、最初のコーナーから「え、これが金!?」って驚き。しかも国立科学博物館から借りてきた本物なのがすごい。」

展示構成

テーマ主な所蔵者
I黄金とエレクトラム(自然金)国立科学博物館・日本精鉱㈱
II角と翼と植物と——古代オリエントの精神世界MIHO MUSEUM・個人蔵
III-1栄枯盛衰 メソポタミアの巻MIHO MUSEUM
III-2栄枯盛衰 ペルシアの巻MIHO MUSEUM
IV黄金の超絶技巧MIHO MUSEUM
V古代バクトリア遺宝——神殿への捧げものMIHO MUSEUM
VI黄金装飾の精華——エトルリアとヘレニズムMIHO MUSEUM・岡山市立オリエント美術館・個人蔵
VII中国古代の黄金MIHO MUSEUM
VIII古代アメリカの黄金MIHO MUSEUM

🟢 総展示数:約255件(大半がMIHO MUSEUM自館コレクション)

「金の輝き」についての豆知識

🟡 「金の輝きって何千年経っても衰えないの不思議」

金(Au)は化学的に非常に安定した金属で、常温では酸素・水・酸などと反応しにくい(酸化・腐食がほぼ起きない)。そのため数千年前に作られた遺物でも発掘時に輝きを保っていることが多い。「永遠の金属」と呼ばれる所以。


☕ カフェ(軽食・カフェ)

🟡 カフェは満席でした。人気で混雑している(特に昼時・繁忙期は注意)。


📝 まとめ

訪問のタイミング

🟡 春(3月〜4月)はシダレザクラとトンネルの組み合わせが最大の見どころ。桜の時期を狙うなら3月下旬〜4月上旬が目安(年によって異なる)。

デザイン観察の視点

  • 素材の統一感:館内はほぼ全面トラバーチン(石灰岩)使用。温かみのあるクリーム色が一貫している。
  • 三角モチーフ:廊下の壁・屋根構造・外装デザインに繰り返し登場。I.M.ペイの建築的シグネチャー。
  • 光の設計:ガラス屋根からの自然光、トンネルの逆光、窓から切り取られる山の景色——すべての「光の場面」が意図的に設計されている。
  • 見せないことで見せる建築:建物の80%を地下に埋めることで、山の景観を守りながら広大な展示空間を確保。

豆知識

  1. 設計はルーヴルのガラスピラミッドと同じI.M.ペイ。彼は中国系アメリカ人建築家。
  2. コンセプトは中国の詩「桃花源記」の桃源郷。「桃の林→洞窟→理想郷」=「桜並木→トンネル→美術館」という対応関係になっている。
  3. 金は人類が最初期に使用した金属の一つで、最古の記録は6000年前のブルガリア・ヴァルナ。
  4. エジプトでは黄金は「神の肉」とされた。金の輝きが腐らないことから、神聖なものとされた。
  5. 今回展示の大半はMIHO MUSEUMの自館コレクション(約3,000点所蔵のうち一部)。

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