全国に足を運ばなくても、デザインの勉強ができると思い、
今年から、ミュージアムやアニメなどのグッズを作成する会社で、週1〜2の封入アルバイトを始めました。
実際に働いてみると、知らなかった美術館や展覧会の情報がおのずと入ってきて、思っていた以上に刺激になっています。
そのアルバイトがきっかけで気になり始めたのが、竹久夢二でした。
以前デザイン探求記でも書いたのですが(『エル・マール まいづる』)、豪華客船のメニューカバーに夢二のデザインが使われていたと知ってから、もっと作品を見てみたいと思い、今日は『モダン都市生活と竹久夢二―川西英コレクション』に訪れました!

展覧会前に読んだ参考図書
竹久夢二の世界
王 文萱 著 / パイインターナショナル / 2024年台湾出身で京都大学にて博士号を取得した研究者・王文萱が、長年の研究をまとめた一冊。美人画だけでなく楽譜装丁・雑貨・絵葉書などグラフィックデザイナーとしての夢二を幅広く収録。図版が豊富で、展示作品と照らし合わせながら読むのに最適です。
竹久夢二《デザイン》 モダンガールの宝箱
石川 桂子 編 / 講談社 / 2012年竹久夢二美術館の学芸員・石川桂子が編んだデザイン特化の一冊。絵葉書・楽譜装丁・千代紙・風呂敷など「使われていたデザイン》としての夢二に絞って紹介。「夢二はデザイナーだった」という切り口と直結する内容です。
マンガでわかる「日本絵画」の見かた
矢島 新 監修 / 誠文堂新光社 / 2017年日本人が生み出してきた名画の特徴と魅力を、マンガでわかりやすく紹介した一冊。1作品見開き2ページで解説していて情報量もしっかりあります。竹久夢二のページもあり、近代日本絵画の流れの中で夢二を位置づけるのに役立ちました。美術展の前後に読むのにちょうどいいです。
近代美術の名作150
北澤 憲昭 監修・美術手帖 編 / 美術出版社 / 2013年日本近代美術を代表する約150人を1ページ1作品のカード形式で紹介。近代美術史の年表や評論も収録。夢二を「近代美術全体の中でどう位置づけるか」を俯瞰するのに使える辞典的な一冊です。
予習動画
今回のコレクションの全貌をインスタで館長が語ってくださってます。行く前に予習として見ていったら作品をより楽しめます。
京都国立近代美術館 MoMAK(@momakyoto)がシェアした投稿

竹久夢二という人
竹久夢二(1884-1934)は、大正時代を代表する詩人画家です。今でいう「大正ロマン」という言葉でよく語られる人ですが、実は単なる画家ではありませんでした。
美術学校や画塾で学んだ専門家ではなく、独学で絵を身につけた「詩人画家」。油彩や日本画にも挑戦しましたが、彼が本当に力を注いだのは、展覧会の大作よりも日常の小さなものを美しくすることでした。絵葉書・便箋・千代紙・風呂敷・浴衣……手に取ってみたくなるような、生活に溶け込むデザインです。


「巨匠」じゃなく「デザイナー」としての夢二
今回いちばん刺さったのは、夢二が「絵で生きていくと決めてから、生活に溶け込むデザインを手がけてきた」という話でした。
展示を見ていて知ったのですが、楽譜の表紙だけでも270点以上手がけていたとのこと。音楽評論家の妹尾幸陽が出版した『セノオ楽譜』の表紙絵を大量に担当し、絵と文字が調和した独自のスタイルを確立していたそうです。
さらに書籍の装幀・千代紙・人形・浴衣……日常のあらゆるものに夢二のデザインが使われていました。1914年(大正3年)には東京・日本橋に「港屋絵草紙店」を開いて、自分のデザイン商品を販売するお店まで作ってしまうという。今でいうアートディレクターの先駆者そのものだったんだと、素直にすごいと思ったし、とても刺激をもらいました!
なかでも印象的だったのが、当時のポスターが実物のまま残っていること。チラシと違ってポスターは貼られることが前提なので、剥がされて残りにくい。それを生で見られたのは、この展覧会ならではの体験でした。

ただ、これだけ活躍していた夢二ですが、大正期に大衆からは絶大な人気を得ていた一方で、独学の画家であるがゆえに画壇からはずっと無視されていたとのこと。生きているうちに専門家から正当に評価されることはなかったそうです。なんだかゴッホみたいだなと思いました。
川西英という視点の面白さ
この展覧会のもう一つの柱が、創作版画家・川西英のコレクション。川西英が生涯で集めた膨大な版画作品のうち、3分の1以上が夢二関連だったというのが興味深いところです。
川西英さん自身の作品もありました。展示を見ていたら、「あれ、このポストカード、うちにある。」と気づいて。顔も名前も知らないまま、旅先でなんとなく手に取って買っていた人でした。

展覧会で名前と作品が繋がった瞬間、「この人やったんや!」とテンションがあがりました。
「夢二に憧れた人間」の目線で集められたコレクションを通して夢二を見る体験も新鮮でしたが、それ以上に、自分がすでに川西英と出会っていたことに気づく瞬間が、この展覧会いちばんの驚きだったかもしれません。
夢二をYoutubeで調べてみた
展示を見ながら、夢二の後半生のことも気になってYoutubeで調べてみたのですが、人気を博した後、「大御所すぎて一般のデザインとして頼みにくくなった」という話が面白かったです。若いデザイナーたちが育ってきて、そちらに仕事が流れ、夢二の仕事が減っていったと。
それでもアメリカに渡って、自身の作品の可能性を模索し続けた姿勢は、人生として楽しそうだなと思いました。
【大正時代と寝た男・竹久夢二】モデル女性は誰だ!?傑作「黒船屋」ってなんの店のこと?そしてプレイボーイ夢二の過激な女性遍歴とは?
【竹久夢二】大正ロマンと竹久夢二の終わり。アメリカやヨーロッパへも渡った夢二、第二の画家人生はどうなる!?驚きの新画風にも挑戦!新たな女性遍歴も【山田五郎が解説!竹久夢二後編】
購入図書
『モダン都市生活と竹久夢二―川西英コレクション』

今回の展示作品が全て載っています。デザインの参考にと購入しました。
デザイン視点のまとめ
アートとデザインの境界線がまだはっきりしていなかった時代に、その真ん中で仕事をしていた人。
100年以上たった今も、夢二がデザインしたグッズが売られていて、現代の人が「かわいい」と感じている。それってすごいことだと思います。
ゴッホも生前は「これは印象でしかない」と批判されていたそうですが、死後も長く愛され続けている。夢二も同じで、時代を超えて残るものって、結局センスのある人が作ったものなんだなと。
自分もそういうデザインをこれからもしていきたいと思いました!