デザイン探求記

和歌山県立自然博物館

今日のデザイン探求記のテーマは「海の生物」。

ここは、思わず続きを読みたくなる手描きの解説があったりと、展示の伝え方がとても勉強になりました。

大きな水槽をのんびり眺めたり、小さな生きものの違いを探したり。どちらも楽しめました。

和歌山県立自然博物館のパンフレットはこちら

和歌山県立自然博物館では、館内に入る前から大きな展示に出会えました。入口前にあるのは、カツオクジラの全身骨格標本です。

公式パンフレットによると、このカツオクジラは1995年11月に和歌山港へ漂着した個体。館内の解説では、成長すると体長12メートル、体重10トンを超える大型のヒゲクジラと紹介されていました。

この標本は、以前はニタリクジラとして報告されていましたが、骨の形を詳しく調べ直した研究によって、カツオクジラと判断されたそうです。骨格標本は、大きさや形を見るだけでなく、生き物の分類を確かめる手がかりにもなるんですね。参考


シノノメサカタザメ。「サメ」という名前でもエイの仲間

館内に入ってすぐ、シノノメサカタザメやタカアシガニの大きな標本が。大きい!!

シノノメサカタザメは、名前に「サメ」とありますが、エイの仲間です。

沖縄美ら海水族館の解説では、カニを殻ごとかみ砕く顎と、石畳のように並んだ歯を持つと紹介されています。沖縄美ら海水族館の生き物図鑑


「黒潮の海」の大水槽を、ほぼ独り占め

進むと、大きな水槽「黒潮の海」が現れました。公式案内によると、水量450トン、ガラス幅15メートルの大水槽です。

和歌山県立自然博物館の展示案内

平日の開館と同時に入ったので、ほぼ貸切状態。水槽を独り占めできるなんて、なんて贅沢。

ゆらゆらしている景色を眺めると、自然と心もゆらゆらするな、と思いました。

館内解説で知った、回遊魚の体の工夫

館内解説では、回遊魚は泳ぎ続け、口から取り込んだ水をえらへ流して呼吸することが紹介されていました。

また、背中側の色が濃く、腹側が薄いのは、上空の鳥や下方のサメなどから見つかりにくくするための保護色だそうです。

ただ泳いでいる姿を眺めるだけでもきれいですが、体の色や動きに理由があると知ると、観察する場所が増えていきます。


マアジとマルアジ。「見分けよう!」が観察の入口になる

マアジとマルアジ、見分けられる?

館内には、マアジとマルアジを見分けてみようという解説もありました。

見分けるポイントのひとつが、尾びれの手前にある小さなひれ「小離鰭(しょうりき)」。マルアジには背びれと尻びれの後方に小離鰭がありますが、マアジにはありません。

マルアジはマアジより体高が低く、体の断面が丸いことも違いとして紹介されています。京都府のマルアジ解説


ミズクラゲ。透ける体から、ごはんが見える?

丸い傘が重なり、縁の白い線が浮かぶミズクラゲ。

傘の中央にある、四つ葉のクローバーのように見える部分。その内側には胃があり、食べた餌の色が透けて見えるそうです。

新江ノ島水族館も、アルテミアというオレンジ色の餌を食べたミズクラゲでは、胃の部分がオレンジ色に見えると紹介されています。新江ノ島水族館「何、食べた?」


羽のようなウミシダ。繊細な線は、餌を捕るための腕

細かな線が左右に並び、先へ向かってしなやかに曲がる姿。植物の葉や羽飾りのように見えますが、ウミシダはウニやヒトデと同じ棘皮動物です。

東京動物園協会の解説によると、ウミシダは腕を使って水中の小さなプランクトンなどを捕らえます。また、根のように見える「巻き枝」で岩にしがみつき、腕で移動することもあります。泳ぐ種も知られています。東京動物園協会「見た目は植物? ウミシダのなかま」

コバンザメはサメじゃない! 吸盤と手描き文字のインパクト

この吸盤は、背びれが変化したもの。サメという名前でも、分類は硬骨魚類。

沖縄美ら海水族館によると、吸着するときには板状のひだを起こす仕組みになっています。大型魚やウミガメなどにくっついて生活します。吸盤の仕組みコバンザメの分類

タコノマクラ。花びら模様のある、平たいウニ

平たい丸みのある体に、花びらのような模様。写真の水槽には、ヤマタカタコノマクラとタコノマクラのラベルが並んでいます。

タコノマクラはウニの仲間です。長い棘が目立つウニとは姿が違いますが、細かな棘があります。砂や海藻などを体につけて隠れることも紹介されています。東京都公園協会のタコノマクラ解説新江ノ島水族館「見えない仕事人」

館内ラベルでは、ヤマタカタコノマクラの花びら状の模様について、呼吸などに使う通水孔の並びとして説明されていました。

変わった海の生き物

ハボウキガイ|砂から立ち上がる、羽箒のような形

砂からすっと立ち上がる、細長いハボウキガイ。館内の解説によると、殻のとがった側を砂に埋めて暮らし、茶道具の「羽箒(はぼうき)」に似ていることが名前の由来とされています。

デザインの視点では、先端から広がる輪郭と、砂の上に立つ姿が見どころ。身近な道具に見立てた名前を知ると、貝の形にも注目しやすくなります。

イソギンチャクに似ているけれど?|白い触手が描く曲線

細い白い触手が、幾重にも曲線を描く展示。写真に写っているのは「ムラサキハナギンチャク」の展示です。

ハナギンチャク類は、イソギンチャクによく似ていますが、分類上は別のグループ。砂の中につくった「棲管(せいかん)」という管状のすみかから、長い触手を広げて暮らします。花のように見える姿にも、生活の仕組みが隠れています。参考:新江ノ島水族館

ムチカラマツ|一本の線に見えて、小さな個体の集まり

(写真真ん中より少し右あたり)縦に細長く伸びるムチカラマツは、植物の枝のようですが、ツノサンゴの仲間です。表面には「ポリプ」と呼ばれる小さな個体が無数に並び、その集まりである群体は、全体で2〜3メートルにもなります。参考:いおワールドかごしま水族館

遠くから見ると一本の線、近づくと小さな形の繰り返し。見る距離によって、注目する形が変わる生き物です。

黄色やオレンジ色に見えるのは、キサンゴの仲間です。

キサンゴ|花のような姿と、日陰で暮らす仕組み

青い水槽の中で目立つ、黄色やオレンジ色のキサンゴの仲間。写真では、花を集めたような形と、背景との色の対比が見どころです。

サンゴには、体内に共生する藻類の光合成から栄養を得るものがいます。一方、キサンゴの仲間の多くはそうした共生藻を持たず、ポリプの触手で餌を捕まえます。そのため、岩陰など、強い日差しの届かない場所でも暮らせるのだそうです。参考:新江ノ島水族館

花のように見える部分が、食べるための仕組みでもある。見た目の美しさと、生き物としての働きを一緒に観察できます。

ゲンロクダイ|魚の模様と、狂言の衣装のつながり

帯状の模様と、背びれの後方にある丸い黒い斑点が特徴的なゲンロクダイ。館内の解説では、この黒い斑点が江戸時代の「狂言袴(きょうげんばかま)」を思わせることが、「元禄鯛」という名前の由来だと紹介されています。

狂言袴は、模様そのものではなく衣装のこと。狂言で用いられる半袴には、麻地に丸い文様を散らしたものがあります。参考:文化遺産オンライン「半袴 茶麻地紅葉丸紋散模様」

魚の体にある丸い模様を、人が身につける衣装に見立てる。生き物の名前から、日本の文様や装いへ話がつながるのがおもしろいところです。

ミズタマサンゴ|丸い「水玉」と、夜に変わる姿

淡い紫色に見える、ぷっくりとした形の集まり。ミズタマサンゴは「バブルコーラル」とも呼ばれ、水玉のような部分は「嚢胞(のうほう)」といいます。インド洋から太平洋の中・西部にかけてのサンゴ礁域に分布しています。参考:沖縄美ら海水族館

館内の解説によると、夜間にはこの嚢胞が縮み、触手が伸びてきます。丸い形が並ぶ姿だけでなく、時間帯によって姿を変えるところにも注目です。

解説に登場する「スイーパー触手」は、サンゴが周囲のサンゴなどと生息空間をめぐって競争するときに使う、刺胞を備えた長い触手のこと。餌を捕まえる触手とは役割が異なります。参考:サンゴの触手の機能を比較した研究

やわらかそうな丸い見た目と、生息場所を確保するための仕組み。その両方を知ると、「かわいい水玉」だけでは終わらない観察になります。

まとめ:きれいな形を見つけたら、その理由をひとつ知る

きれいな色や、ちょっと変わった形。「これ、なんだろう?」と気になったら、そばの説明も読んでみる。それだけで、生きものを見る楽しみがひとつ増えます。

今回の写真を見返しても、青とオレンジの組み合わせや、ぷくぷくした水玉、細い線が広がる姿など、気になるものがいろいろ。手描きの説明にも、生きものを知るヒントがありました。

全部の名前や仕組みを覚えなくても、「きれいだな」「こんな形にも理由があるんだな」と、ひとつ知れたらそれで十分。

大水槽を眺めて、心までゆらゆら。そんな時間も含めて、海の生きものの色や形を楽しむ、今回のデザイン探求記でした。

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